先月、アイアンセット(4~PW)の持ち込みがありました。
シャフトはカーボンで、ヘッドは軟鉄鍛造品でした。
シャフト、ヘッド、グリップのいずれにも、その店のロゴの入ったパーツが使用されていました。
ロゴは、お客様が注文されたショップのオリジナルロゴであると思われます。
ロゴだけを入れたものではなく、パーツ自体も設計されたように思われるものでした。
お客様はこのアイアンに、「しなりを感じられず、ボールが捕まらない。」といった印象を持っていたようです。
計測結果を見ても、特に振動数が大きい訳でも、バランスが少ない訳でも、重量が軽い訳でもなかったのですが、お客様は何か気に入らない様子でした。
シャフトのしなりを感じるようにする方法はいくつかあると思います。
・シャフトを換える。 ・グリップの素材をソフトな物にする。 ・ヘッドに鉛を貼り、バランスを上げる。 ・シャフトの向きを合わせる。 ・シャフトを伸ばす。 |
などが挙げられるでしょうか。
せっかく、高額で購入した物なので、今の材料を使い、出来る限りの調整を試みる事になりました。
当店で手を入れることによって、余計な作業にならないかとは思ったのですが、「構わない!」との事で、フル調整をする事になりました。
抜いたシャフトの先を見ると、真鍮バランサーがありました。
ただ、全番手に入っていた訳ではなく・・・。
バランサーだけを並べてみると、長さは様々であり、シャフトの穴に入らない先端の部分の厚みも様々でした。
先端の厚みの一番薄いもので、1mm、厚いもので4mmありました。
シャフトの穴に入る見えない部分の長さも、様々でした。
このクラブのヘッドのシャフトの入る長さは30mmと、一般的な長さがありました。
バランサーの先端部分が4mmあると言う事は、シャフトが26mm入った状態で接着されていた事になります。
シャフトが26mm入った状態でヘッドが抜ける事はありませんが、30mm入った状態の番手とは、しなり方が異なり、振動数が合わなくなる事も起こりえます。
4mmのものはPWに入っておりました。
バラす前の振動数 |
9番 313cpm |
PW 309cpm |
振動数はPWが9番より少なく、逆転しておりました。
すると次は、バランサーを除去したシャフトをヘッドと接着する段階で問題が・・・。
PWのヘッドにシャフトを30mm挿せば、振動数の逆転は避けられそうなのですが、30mm挿してしまうと、全長が4mm短くなってしまうのです。
悩んだ末、30mm挿す事にし、短くなったPWの長さに他の番手を合せ、バックフェースに鉛を貼る事にし、フル調整を完了しました。
それでも「調整」では根本にある問題は残ってしまい、お客様に満足して頂く事にはならず、シャフトを交換する方向になりました。
間違って選択したと感じたクラブとは、早く決別するのが良いかと思います。
大事なのはその次にある、改めて自身にあった正しいクラブを選択するときには、ユックリとした時間を持つ事だと思います。
多くの出会いでは、時間の使い方が反対の事が多いような気がしました。
ぜひ、逆の意識を持ってクラブを手にして頂きたいと思います。