そう、今年初日の開店時のことでありました。
昨年の秋頃に、HONESTのホームページが縁となり、遠方からご来店頂いた方のお話です。
数か月に何回かは大阪に来る事があるとのことで、お帰りの際に訪れて下さったのです。
今回は、アイアンのフル調整の注文を頂きました。
前回調整させて頂いたアイアンは#2~SWの10本(AW無し)セットでした。
M社のマッスルバックタイプにP社のスチールシャフトでした。
10数年前に流行し、人気の高いプロモデルでした。
グリップはお気に入りのラバータイプに交換された状態でした。
3パーツにバラし、ネックの異物をそうじし、シャフトを差し替え、アングルを調整し、グリップを差し替え、送り返したのでした。
ヘッドの重さのピッチは均等ではなく、バラす前に計測したロフト角・ライ角のピッチも揃ってはいませんでした。調整後の結果には満足しておられた様子で、遠方ながら2度目の来店をして頂けたお客様が、今年初の来店であった事もあり、店主も良い気分で今年もスタートできました。
今回の注文は、2セット目のフル調整の依頼、そして、ヘッドは前回と全く同じM社のマッスルバックでした。
グリップも同じタイプでした。
シャフトだけがT社のスチールシャフトでした。
1セット目のP社のシャフトと対抗している(重さ、硬さなどが)T社のシャフトで、P社のシャフトは「中調子で高弾道!」と謳ったシャフトであり、一方、T社のシャフトは「元調子で低弾道!」と謳ったシャフトでありました。
当時は、現在のようにシャフトの種類も豊富では無いために、スチールシャフトを使っていた大半の人がP社かT社のシャフトを使っていたのではないでしょうか・・・?
今回は#3~SWの9本(AW無し)セットでした。
前回の調整で、調整内容の説明は理解して頂いており、話は短時間で終わったのですが、その短時間の話の中で、
「T社のアイアンセットの方が弾道は低いですね! やはり、シャフトによる違いですかね・・・?」とおっしゃいました。
聞いた私も「そうかもしれませんね!?」と曖昧な返事をしてしまいました。
お互いに、ヘッドが全く同じタイプなので、シャフトの特性を信じ切った結果の会話をしてしまったのです。
そして、「1セット目と出来るだけ同じ数値になるように仕上げておきます!」と言ってクラブを預かりました。
翌日、バラす前にT社のシャフトのアイアインセットを計測しました。
ロフト・ライ角を計測した時点で「ん~???」と・・・
当時のモデルにしては、ロフト角が立っている(数値が小さい)と思い、1セット目のスペック表と照らし合わせて見ました。
ロフト角(P社) | ロフト角(T社) | |
2 | 19.5 | |
3 | 21.5 | 20.0 |
4 | 24.5 | 22.0 |
5 | 27.5 | 25.0 |
6 | 31.5 | 29.0 |
7 | 35.5 | 33.0 |
8 | 39.0 | 38.5 |
9 | 43.0 | 43.0 |
PW | 48.0 | 47.5 |
SW | 55.5 | 56.5 |
購入経路はわかりませんが、おそらく・・・
・アングル調整をされていた物を購入されたのか?
・元々なのか?
最大で2.5度も起きた(少ない)番手もありました。
シャフトの特性、ヘッドが全く同じモデルであることに惑わされ、「そうかもしれませんね!?」と曖昧な返事をしたことを、なんだか・・・恥ずかしく感じました。
直ぐにお伝えし、無理のない範囲で調整すると言う事になり、先日、無事に仕上げてお送りする事が出来ました。
今回は、同じヘッドについて・・・ということで、「同じ」ロフト角であろうと思い込んで話を進めました。
しかし、いざ作業を始める前に計測してみると、異なったものであることがわかりました。
刻印は同じ・・・しかし、内容が違う・・・。
やはりこの業界、経験と確かな計測との両方を併せ持った技術が必要とされると、改めて感じた出来事になりました。